第四回は、nudge’em all 坂木誠さんが「トンネル(Album SEE収録曲)」を
ほぼひとりで仕上げた経緯について、
また、その後に続くマスタリングの作業について説明してもらった。
今回でいよいよ最終回。
これまでの制作スタイルから現在のスタイルになるまでの経緯で
坂木さんが感じたこと、伝えたいこと、たくさん語ってもらっている。
(撮影:桧原勇太)
坂木:そうそう。それで、今回は最終ミックスまでgarage bandで
自分で仕上げた曲が1曲あるんだ。
vrs:えっ、どういうことですか!?
坂木:歌詞だけSaloonに書いてもらって、演奏からミックスまで全部自分で
やった曲があるんだよ。今回のレコーディングを始めるに当たって、
事前にレーベルには12曲入りにすると言ってたんだけど、レコーディングに
入る頃にまだ11曲しかできてなくて(笑)
vrs:そうですよね、うちのスタジオで録ったの11曲でしたよね。
坂木:勝手に11曲で大丈夫なつもりでいたら、
やはり12曲でという流れになり(笑)
結局マスタリング当日の朝にギリギリ仕上げた曲なんだよね。
作曲に1日、アレンジで2日、
作詞はオレがgarage bandで詰めた音源を送った後、
Saloonが30分であげてきたんだ(笑)
vrs:30分ですか!?す、すごい…。
坂木:で、その日のうちにオレが歌を自宅でレコーディングして、
計4日くらいで仕上げたんだよね。
vrs:ミックスも坂木さんがやられたんですよね?
坂木:そう、でも、結局プロのエンジニアの人がやるミックスの仕上がりには
かなわないので、もう真逆をねらってみました(笑)
vrs:真逆ですか?
坂木:きれいじゃない、音が劣化したようなミックスを
いかにつくるかってことをめざしたんだ。
最初は、その演出をマスタリングのエンジニアの方に
やってもらおうと思ってて。
自分なりにミックスした音源をつくって、それとは別に、マスタリングで
音をどう劣化させてほしいかの参考にしてもらうための音源をつくったんだ。
vrs:なるほど。
坂木:で、どうしたかというと、その自分でミックスした音源を
小型のテープレコーダーに一度録音して、それをまたgarage bandに
録音し直して、オーディオデータにしてからマスタリングエンジニアに
渡したんだ。
テープレコーダーを通したオーディオデータは、最初は
エンジニアに事前に聴いてもらうだけの予定だったのに、
エンジニアが「こっちの方がいい」って言い出して(笑)
で、結局そちらを採用したってわけ。
vrs:そうだったんですね(笑)
・ここで「トンネル」のGarage Bandファイルが立ち上がる。
伴奏と打ち込みの歌メロのみの状態。
坂木:最初はこんな感じで、これをSaloonに送って歌詞をつくってもらったんだ。
vrs:なるほど。これ、歌のメロディは、バンジョーの音色ですか?
こういう音色を選ぶ感覚がやっぱりミュージシャンですね。
坂木:こういう曲の雰囲気をつくるのも人に伝える上で大切なんだよ。
雰囲気と言えば、オレのこの曲のイメージはオールナイトニッポンの
オープニングのテーマソングなんだよね(笑)
vrs:そうだったんですね、そう言われてみれば(笑)
坂木:ビートルズの「Black Bird」とかユニコーンの「風」みたいな
短い曲がつくりたくて。
・ここで「トンネル」の別のGarage Bandファイルが立ち上がる。
坂木:で、これがテープレコーダーに録る前の状態。
カセットテープに録音すると独特な※コンプがかかるから、
それを想定して事前に曲の高音域を持ち上げてるんだよ。
※「ピークコンプレッサー」の略。
音声入力の変動範囲を一定レベルに「抑える」(compress)機能。
一種のエフェクト効果。
vrs:なるほど。ところで、これは例のSAMSUNGのコンデンサーマイクで
録音してるんですか?
坂木:そうそう、歌もコーラスも楽器も全部(笑)
あ、コーラスは他の曲も全部SAMSUNGのコンデンサーマイクだよ。
・ここでさらに別のGarage Bandファイルが立ち上がる。
坂木:で、これがテープに録って、さらに取り込んだ音。
ラジオで聴いてるような感じしない?
しかも、オレの持ってるテープレコーダーって小さいテレコだから、
過大入力かどうかとか録って聴いて判断するしかなくて。
というか迫力も増してるよね。
歌とかグッと前に出て来る感じしない?
vrs:しますします。
坂木:で、こういう効果ってマスタリングの作業で演出するの、
なかなか難しいみたいで。
だから、こっちが採用されたって言うことらしい。
vrs:なるほど、そうだったんですね。
坂木:それで、今回の音源って、自宅レコーディングしたことで、
演奏もとことん納得できるところまで追いつめてたこともあって
全体的にきれいに仕上がり過ぎてたみたいで。
マスタリングエンジニアはいままでのナッジ作品に
関わっている方なので、「今回録り方変えた?」って、
真っ先に指摘されたんだ。
なので、今回マスタリングでは、アナログのオープンリールのテープを
一度通してから、仕上げたようだよ。
vrs:なるほど。一度アナログ機材を通して、
デジタルっぽさを緩和したんですね。
坂木:いやぁ、でも、今回のアルバムつくるのホントたいへんだった。
死ぬかと思ったよ(笑)
vrs:(笑)
でも、アルバム1枚つくっちゃいましたからね。すごいですよ!
歌をレコーディングしてる時にも、坂木さん言ってましたけど、
自分で演奏して、録音して、判断してっていう一連の作業を
ひとりでやるのは本当につらいって。
坂木:そうだよ。だって、昔スタジオでレコーディングしてた時は、
エンジニアの方にさらにアシスタントが付いてたりしたでしょ?
さらにプロデューサーがいたりとか。
今回のようにDAWを使えば自宅でも同じようなことはできるんだけど、
結局それはそれまで担当してた人の役割が誰かに降り掛かるって
ことなんだよね。
だから、DAWを使うにしてもバンドのメンバー間で作業を仕分けられたり
できるのがいいんじゃないかな。
まぁ、メリットデメリットあると思うけど。
vrs:そうですよね。判断する人の数が増えるとそれはそれで、
決断までに時間がかかったり、いろいろ弊害も生みますからね。
では、最後に、うちのスタジオのお客さまは、
これからバンドを組んでみようとか、本格的に音楽をやっていこうという
比較的若い方が多いのですが、そういった若いミュージシャンに
何か一言アドバイスをお願いします!
坂木:アドバイスか…何だろう。
そうだな。曲は誰にでもつくれるから、どんどんつくれ!ということかな(笑)
オレも基本的には鼻歌を録っておいて、あとでコードを起こしてって
作業が基本だし。
その作業も昔はテープレコーダーだったけど、いまは家に
テープレコーダーはないけどパソコンならあるって時代だから、
いってみれば、いまの若い人は生まれた時から録音するための
機材はどの家にもあるって環境でしょ?
だってgarage bandはMacintosh買えば
最初から付いてくるソフトだからね。
だから、いまの若い子ってホントうらやましい。いいなぁ。
vrs:坂木さん、うらやましがらずに、何かメッセージを…(笑)
坂木:そうでした(笑)
パソコンでレコーディングしたりすることも、最初はたいへんだと思うんだ。
でも、いまはネットで調べればすぐにわかるし、いろいろいじってれば、
自然とできてたりすると思うし。
パソコンをいじってて爆発するわけじゃないから(笑)
遊びの延長として楽しめればいいんじゃないかな。
とにかくやってみたいと思う人はどんどんやってみればいい。
最初からちゃんとしたものをつくる必要はないんだから。
vrs:なるほど、心強いアドバイスありがとうございました!
アルバムリリースに向けて準備、がんばってください!
坂木:ありがとう。
もう次のアルバムに向けた曲づくりは始めてるんだけどね(笑)
vrs:えーっ!!!
—–
あとがき
以上をもちまして坂木さんとの対談は終了です。
最後までお付き合いいただいた方々、本当にありがとうございます。
僕自身、自分で初めてレコーディングを経験したのは、20代半ば。
それまでは演奏することと聴くことが音楽を楽しむすべてでした。
レコーディングを経験することによって、音楽をつくる苦しみや楽しさを
ようやくわかりだした頃だったように思います。
今回のこの企画は、自分も過去に抱えていた悩みや楽しさを
何かで表現して、ひとりでも多くの人が音楽をつくることと
向き合うキッカケになればいいなと、
スタジオを始めてから考えていたことでした。
僕自身、今回、坂木さんとのお話を通じて、改めて、
過去に経験した悩みや楽しみを振り返ったり、
まったく新しい発見をしたりと、得るものが多く、
とてもおどろいています。
僕の文章力のなさや専門用語もちりばめられているので、
わかりにくい部分も多々あったかと思いますが、
坂木さんの口から語られる内容で、音楽をつくることの面白さは
充分伝わったのではないでしょうか。
ブログの内容について、もっと詳しく聞いてみたいと思った方は、
いつでもスタジオにご連絡ください。
できる範囲でご説明致します。
最後になってしまいましたが、4回にもおよぶ内容を
詳しく、そして楽しく語っていただいた坂木誠さん。
その対談の柔らかい雰囲気をそのまま写真に表現してくれた
カメラマンの桧原勇太さん。本当にありがとうございました!
また別の機会で音楽についてまた熱く語りましょう!
さぁ、いよいよNUDGE’EM ALL 4枚目のアルバム「SEE」の
リリースに向けて、特設サイトがオープンしたりと、
盛り上がり始めています!
「SEE」は、 2011年9月7日Groovie Drunker Records より
発売予定です!
いま予約すると例えばタワーレコードではポイントが何と5倍!
だったりとお得度満載です!ぜひぜひ店頭、オンラインでご予約を!
■「SEE」特設サイト
http://www.koga-records.net/nudgeemall
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■ディスクユニオン特典
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http://t.co/6Sf0IX0 (パソコン)
http://t.co/jgloa1U (携帯)
また、坂木さんとSaloonさんのユニット「まさる」での
ライブの予定があります!
■7月29日(金) 場所:高円寺AMP cafe
[LIVE]
まさる(マコト+サルーン/NUDGE’EM ALL)
バーバンク・サン
原直央(ASPARAGUS)
open:19:00 start:19:30
ADV/DOOR 1500円 (D別)/2,000円 (D別)
そして、NUDGE’EM ALL、次のライブはこちら!
■8月16日(火) 場所:高円寺HIGH
SCARLET presents
“10周年企画/アーバンライフなつーマンライブ8 ”
[LIVE]
SCARLET
NUDGE’EM ALL
Special Guest Act:PLASTIC GIRL IN CLOSET
open:18:30 start:19:00
ADV/DOOR 2,000円 (D別500円)/2,500円 (D別500円)
※詳細は http://www.nudgeemall.com にてご確認ください。
2011年07月23日