studio talk「アーティストとスタジオ」その3

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第三回は、坂木さんにnudge’em all 4枚目のアルバム「SEE」の制作にあたり、
初めて挑んだpro toolsでの自宅レコーディングについて、語ってもらっている。
アーティスト自身で考えた使い方の工夫もさることながら、
坂木さんの目線での「気付き」はDAWのメリットをユーザー視点で教えてくれる。
現時点でDAWの導入を考えている人にも参考になる内容になっている。
(撮影:桧原勇太)

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坂木:リズムや歌すべてが決まった段階で
やっと本番のレコーディングにつながっていくんだ。
さきほど言ったように今回スタジオでレコーディングしたのはドラムと歌。
なので、まずドラムをレコーディングするための準備をします。
ドラムを録るレコーディングスタジオのエンジニアさんは、
pro toolsのシステムなので、うちらがつくったgarage bandのデータを
pro toolsでも使えるように一度変換してから渡します。
で、あらかじめプリプロの段階でどう叩くかは決めているので、
レコーディング当日は、基本的にはgarage bandのデータ通りに叩いてもらうだけ。
何も決めていないとスタジオで考えることになって、時間ばかりかかるので、
あらかじめ決めておくのはレコーディングを効率よく進める上で
非常に有効な手段だと思うよ。

vrs:なるほど、確かにレコーディング当日って
結構なんだかんだで時間がなくなってしまうんですよね…。

坂木:で、録り終わったデータはpro toolsのデータのままもらって、
ここからようやく、うちらもpro toolsを使って作業を進めていく感じです。

vrs:じゃあ、曲づくりの段階はほとんどすべてgarage bandで行ってるんですね。

坂木:そう。本来であれば最初から最後まで一貫したシステムが使えれば、
例えばプリプロからpro toolsを使って作業できていれば、
プリプロで使ったギターとかベースにいいテイクがあった時、
そのまま本チャンでも使うこととかができるんだよね。
今回、唯一Sir Dukeでつくった打込みのフレーズだけは
garage bandでつくったものをpro toolsに取り込んで使ってるんだ。
Sir DukeはSaloonがやりたいと言い出して、
アレンジもほとんど彼が考えたんだよ。
元々、オレよりもあとにgarage bandも使いだしたんだけど、
nudge’em allとは別にやってるバンドの方でメンバーが使ってるのを見て、
見よう見真似で覚えたらしくて。

vrs:へー、こんな短期間にすごいですね…。
しかも、こういうアレンジを練ったりという作業に、
ドラマーが積極的に入っていけるのもこういうツールのおかげですよね。

坂木:そうなんだよ。
逆にこういうツールを使っていかないと
ドラムアレンジとかってなかなか人に伝えにくいよね。

vrs:確かに。ところで、さきほどから気になってるのですが、
Saloonさんもgarage bandを持ってるんですか?

坂木:そうそう。やっぱり同じシステムを
バンド間で共有するのは重要かも。
オレが先に買って、Saloonにも買ってもらったんだよ。
で、オレはそのあとLogicに進みたかったんだけど。

vrs:えっ、そうなんですか!?

坂木:でも、まだ封も開けてない(笑)

vrs:(笑)

坂木:やっぱり話を聞くと編集の作業がしやすそう。

vrs:そうですね。うちのスタジオはLogicのシステムですが、
オーディオデータはgarage bandより扱いやすいですよ。

interview064

坂木:なのに、なぜ今回pro toolsを導入したかというと、
レコーディングするスタジオがpro toolsだったというのもあるんだけど、
pro toolsのことを相談できる知り合いが周りにいったってことが一番大きいかな。

vrs:じゃあ、今度Logic使い始める時はご相談ください(笑)

坂木:ぜひ!(笑)あと、オレの周りだとLogicの人が結構いる。
garage bandと併用してて。でも、garage bandってわりと頻繁に固まるから。
この画面の立体的な加工とかが重いんだよね、きっと。
オレは、デスクトップとかも無地だし。
壁紙とかもヘタするとすごく影響するからね。

vrs:そうですよ。
僕も昔、Logicを使うMacに壁紙貼ってたら先輩にすごく怒られました…。

坂木:と、まぁ、うちらのやり方はこんな感じですよ。
他のバンドはまたぜんぜん違うやり方なんだろうけど。

vrs:僕が昔やってたバンドでは、最初の頃はまず仮の歌とギターに合わせて
僕がドラムを叩いてってところからアレンジを詰めてました。
僕がエンジニアも兼務してたっていうのもあるのですが、
僕がドラムで勝手に曲の方向性を決めさせてもらって、
みたいなこともやってましたね(笑)

坂木:それはどんな状態からのスタートになるの?

vrs:いや、もうMTRに歌とアコギだけの状態から、
スタジオに入ってドラムを考えながら録っていくって感じで。

坂木:へー、人それぞれなんだね。

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vrs:ちなみに坂木さん、ギターってどうやって録ってたんですか?

坂木:本チャンはもうpro toolsに直接録っていく感じで。
レコスタのエンジニアさんからプロジェクトファイルのまま、
ドラムのデータの入ったpro toolsのファイルをもらって。
もちろんバックアップはこまめに取っていたけど、
このファイルに直接録っていったよ。

vrs:M-boxにシールドを直接つないで録ったんですか?

坂木:そうそう。
元々、オレはライブでもエフェクターそんなにつながないから。
歪むか歪まないかみたいな。
なので、ギターも内蔵の歪み系のプラグイン1種類しか使ってないよ。

vrs:えっ、ひとつだけですか!?

坂木:そうそう。そのプラグインのゲイン調整だけで音つくったんだよ。
普段も、クランチかオーバードライブかディストーションか、くらいのもんだから。

vrs:じゃあ、エフェクトはpro toolsの中だけで処理したんですね。

坂木:そうそう。
でもまあ、※リアンプするんで必要なのは雰囲気だけだったからね。
で、最終的にリアンプの処理はスタジオでするんだけど、
その時に音作りをすればいい。
あと、不安だったのは過大入力とか。逆に小さすぎるとか。
その辺はわからなかったので、周りによく聞いたりして気をつけました。
あ、そうだ。
レコーディング初日だけpro toolsに詳しい知り合いにウチまで来てもらったんだよ。
その人にセッティングからいろいろ聞いて。あとはサンプリングレートのこととか。
どんな風に録って、それをレコーディングするスタジオに
引き渡す時にどうするかとか。
あとはパンチインの仕方とか。
操作というよりはどこでパンチインすればいいかとか。
例えば、レコーディングするスタジオとかだとエンジニアさんが、
結構無茶な場所でもつないでくれたりするんだけど、
自分たちだとそうもいかず、結構途切れたところとかじゃないと
難しいみたいなこととかを教えてもらって。

※リアンプ:DI経由でラインで録った音源を、出力してアンプを鳴らし、
マイクで集音するレコーディング方法。

vrs:そうか、いままでの常識が通じない部分が出て来るんですね。

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坂木:そうそう。でもね、いままでgarage bandで曲づくりをしてたじゃない?
あと、いままでも仕事とかでそれなりにITスキルは人並みに持ってたりして。
例えば、オーディオデータの考え方とかも、
いま編集しているデータとは別に元のデータがあって、
なので、この編集は非破壊の作業で、みたいなことはわかってたりして。

vrs:なるほど!それはすごい!

坂木:そうなんだよ。オレ、DTPとかやってたから、仕組みとかはわりと理解できて。
あと、ショートカットとかもわりとどれも共通だったりするし。
なので、最初はそのpro toolsに詳しい知り合いに毎日のように来てもらって作業、
みたいなことを想像してたんだけど、結局来てもらったのは初日だけで済んで。

vrs:すごいですね、初めてなのに。相性がよかったんですかね?

坂木:相性かどうかはわからないけど、
pro toolsはgarage bandと比べてすごくサクサク動くから、
ストレスなしで使いやすかった。
あとはこれから勉強って感じでまだガイドブックもぜんぜん読んでないし。
まぁ、でも、多少ITスキルが自分にあってホントよかったと思う。
これがなかったら、ホントいまのレコーディングスタイルに
ぜんぜん付いていけなかったと思う。
IT革命ってホントだったんだと実感(笑)
だって、5年くらいレコーディングしてなかった状況で、さぁやろうと思ったら、
何かこんな世の中になってて…。

vrs:そうですよね。5年くらい前といまじゃ
ぜんぜんレコーディング環境違いますよね。

坂木:3rdのSunnの時からMTR導入して、
あとは録るだけって状態にすることはやってたけど、
今回は本チャンも自分たちで録ってたからね。
ただ、ひとつネックと言えば、バンド所有のpro toolsはバージョンが8なので、
M-boxがないと動かないってところが不便かな。
オーディオインターフェイスが1台しかないから、オレがギターを録ってる時に
同時進行で別のところでベースを録ったりってことはできないからね。

vrs:誰か他のメンバーがpro tools9を買ってくれればって感じですね。

坂木:ホントそう!(笑)

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第三回はここまで。次回はいよいよ最終回!お楽しみに。

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また、文中のNUDGE’EM ALL、6年ぶり4枚目のフルアルバム「SEE」は、 
2011年9月7日Groovie Drunker Records より発売予定です!

2011年07月15日

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