三回目の今回は、どうやったらリズム感がよくなるか、などなど
渡辺さんの持論をお話いただきました。ぜひ参考にしてみてください。
(撮影:桧原勇太)
velvet room studio(以下、vrs):僕ひとつ疑問に思ったことがひとつあって、
ちょっと前に坂本龍一さん監修の「スコラ」というテレビ番組に
高橋幸宏さんが出演されていた時に、※オープンリムで叩かれていて。
で、オープンリムってスネアの打面を力で押さえるような打法ですが、
これをモーラーでやることってできるのかなと思って。
※オープンリムショット:スティックの先端がヘッド面を打撃すると同時に、
手前の部分がリム(枠の部分)にも当たるように振り下ろすことで、
独特の甲高い打音が得られる打法(Wikipediaより引用)
渡辺:できますよ。スネアの打面を叩く時のスティックの当てる角度を変えて、
リムにいっしょに当てればいいんです。押さえつける必要はなくて。
vrs:振り抜くってことですよね?でも、押さえつけないで、
ああいったダッダッって止まったような音になるんでしょうか?
渡辺:幸宏さんの場合は、 完全に止めてミュートも加えて、
あまり※サスティンが出ないように叩いてますよね。
ただ、あれは幸宏さんのスタイルなので。
モーラーの場合は、押さえつけずに、ドラム自体の鳴り最大限に
引き出すような状態をイメージしているので、
例えば、バスドラにしても、ビーターで打面を押さえつけるのではなく、
オープン奏法で叩くことによってサスティンを伸ばすイメージかな。
※サスティン:発音動作によって楽器が音の発生を開始した後に
聞こえる余韻を指す(Wikipediaより引用)
vrs:なるほど。
渡辺:サスティンをいかに長く伸ばせるか、というか楽器自体をいかに
鳴らすことができるか、これがモーラーを会得する上でのひとつの
目安になるかな。ただ、これが目的ではない。
何故かというと、叩く人が自分がやりたい音楽によって
各々が求めるサウンドは違うと思うので。
別にモーラーで叩いても、ドラム自体をテープとかでミュートして叩けば
幸宏さんのようなサウンドに近づけることはできるし。
vrs:なるほど。自分が叩く時にミュートしなくても、そういう処置をすれば
同じようなサウンドにはなりますもんね。
渡辺:止めて叩くことが悪いのではなくて。
ただ、長いサスティンを出す方法を会得した上で、止めて叩くのと、
止めて叩くことしかできないとでは、選択肢も変わってくるし、
別の次元での話になってしまうよね。
vrs:そうですよね。逆に力で押さえつけるのは誰でもできるけど、
サスティンのコントロールはモーラーを会得してないと難しいことですもんね。
渡辺:あと、叩いた時のサウンドも、割とその楽器が本来持ってる中低域の
ふくよかな音がより出るようになったり、音量も上がって、
さらに聴いててイヤじゃない音なんだよね。
vrs:そうなんですね。
渡辺:だから、レッスンしてて、生徒さんの叩く音が気持ちいい音に
変わっていくのを聴くと、こっちもすごくうれしくなるんだよね。
そう、その音!みたいな(笑)
vrs:あっ、でも渡辺さんに教わってて、やっぱり音にはすごく敏感に
反応されたかも。「あっ、いまいい音になってきましたね」とか言われた
気がします(笑)
渡辺:だって、やっぱりイヤなものはイヤだし(笑)
これは、生徒さんのためでもあり、自分のためでもあるという(笑)
vrs:なるほど(笑)
渡辺:でも、初心者の人はまずドラムを叩くこと自体が楽しいでしょ?
叩いて、その音が体に響く感じをできるだけ多く体感した方がいいよね。
それをやってるとやってないじゃ、ぜんぜん違ってくると思う。
例えば、週に一度練習に入るようなバンドにいるんだったら、
その代わり個人練習は週に何度か入るようにした方がいいと思う。
vrs:渡辺さんはドラムを始めた時ってどんな練習をしてたんですか?
渡辺:僕は最初BOOWYとかジュンスカのコピーをしてましたよ(笑)
vrs:うちら世代の王道ですね(笑)
渡辺:でも、最初ドラムセットがなくて、素振りをしてる期間が長かったせいか、
初めてドラムを叩いた時に8ビートは叩けたんですよ。
vrs:えーーーっ、マジですか!? すごい!
渡辺:そうそう、いきなり曲ができたんですよ。
vrs:No New York的な(笑)
渡辺:そうそう、B・Blueとかね(笑)
でも、その時は効率のいい叩き方なんて知らないから、
1曲叩く度に腕パンパンにして(苦笑)
vrs:その時に人に習おうとは思わなかったんですか?
渡辺:人に習うっていう概念がなかったかな。
vrs:確かに僕も最初は遊びの延長っていう感覚だったし、
何かそれを人に習ってしまったら、楽しくなくなるんじゃないか、
っていう恐怖感みたいなものは持っていたかもしれないですね。
渡辺:そうだよね。僕もこのままやってたら、ドラム叩けなくなるって理由で
習い始めたし。必要に迫られてだよね。でも、自分でうまくなったかもって
感じるようになったのって、実は人に教えるようになってからなんだよね。
vrs:そうなんですか!?
渡辺:そうそう。人に教える時って基礎を何度も教えるでしょ?
さらに自分でお手本を見せたりするじゃないですか?
そうすると自分も繰り返し繰り返し基礎をやることになるわけですよ。
ということは、基礎がより盤石なものになっていくわけです(笑)
vrs:なるほど!(笑)
渡辺:ライブとかやってても「うまいッスね」って別のバンドのドラムの人に
言われることも増えたし。でも、それって音質が変わったことが一番
影響してるんだと思うんだよね。そんなに難しいことをやってなかったりするし。
vrs:ふむふむ。
渡辺:やっぱりバンドってリズム隊が要じゃないですか?
ドラムが下手なバンドはしょぼく見えてしまうし。
vrs:そう考えるとつくづくドラムって損な楽器ですよね…。
渡辺:確かに。ちゃんとやって当たり前ってね(笑)
かつそんな目立つわけでもないっていう。
vrs:間違いでもしたら大事になっちゃいますもんね(笑)
渡辺:だからかもしれないけど、ドラムやってる人って
基本的にいい人多いよね。
vrs:(笑)
確かに割と何言われても気にしない人多いですよね。
渡辺:そうそう。おおらかな人が多いよね。
vrs:O型の人とか向いてるんじゃないかと思って。
渡辺:僕O型だよ。
vrs:キターーー、生まれながらのドラマー(笑)
渡辺:(笑)
ところで、性格とは全く違う話だけど、リズム感を良くする方法って、
レッスンの時教えましたっけ?
vrs:いいや、聞いてないと思います。
渡辺:単純にクリックで裏を取るっていう練習なんだけど、
それを個人でやればいいのかっていうと、そうでもないんだよ。
例えばバンドで練習しているとして、メンバーそれぞれのリズム感のレベルが
違うとすると、バンドのリズム感のレベルが一番低い人のレベルに
そろってしまうんだよね。
vrs:おっと、それはマズい状況ですね。
渡辺:やっぱりうまい人っていうのは、その一番低い人に合わせることが
できるんだけど、その一番低い人は自分より高いレベルの人には
合わせることはできないので、結局その底辺で合わせることになるっていう。
vrs:なるほど。
渡辺:だから、リズム感を上げる練習は、ドラマーだけじゃなくて、
バンドメンバーそれぞれがやらないといけないことなんだよね。
でも、バンドのグルーヴが出ないとかよくドラマーのせいにされがちなんだけど、
実は原因はそこになくて、そのメンバー間のリズムへの理解が共有できていない
ことだったりするんだよね。
vrs:そうか…。
渡辺:で、最近、山背メソッドではグルーヴを理論的に定義付けていこうとする
試みがあって。
vrs:えっ、グルーヴをですか?
渡辺:そうそう。グルーヴって人それぞれ解釈が違っていたり、曖昧なものに
なってたりするんだけど。なぜそれを人が聴いていて気持ちいいと思うのか、
それを理論的に説明していこうとしてるんですよ。
vrs:グルーヴ理論!!!
渡辺:そうそう。それはおいおいレッスンの中で紹介していこうと思います。
—–
第三回はここまで。次回はいよいよ最終回。
渡辺さんから世の迷えるドラマーやアーティストの方に参考にしてほしい
お言葉をいただいております。次回もお楽しみに!
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2011年10月23日