studio talk「アーティストとスタジオ」番外編その4

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最終回の今回は、グルーヴからチューニングについて、そして最後に
渡辺さんから世の迷えるドラマーに参考にしてほしいお言葉を
いただきました。ご覧ください!
(撮影:桧原勇太)

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渡辺:ドラムをやってて、まぁ、ベースもそうだろうけど、グルーヴって
テクニックうんぬんじゃないから、あらかじめ持っている人は持ってるし、
感じ取れない人はやっぱりいるし、それを定義づけるってなかなか
大それたことをやろうとしてるとは思うんだけどね(笑)

velvet room studio(以下、vrs):なるほど。いろんなジャンルの
音楽があって、でも、それぞれのジャンルの中にも気持ちいいと
思える瞬間は必ずあって。
よくグルーヴってブラックミュージックの中で語られることが多くありますが、
そうじゃなくて、どのジャンルの音楽でも当てはまるものだと思うんです。
その辺りはどうなんでしょう?

渡辺:そうだね。例えば、音楽の中に縦ノリ横ノリってあるじゃない?
で、グルーヴって横ノリとして言われることが多いんだけど、
縦ノリのグルーヴももちろんあるから。ドラムでも8ビートを横ノリで
叩くのと縦ノリで叩くのとでは、まったく違うニュアンスだし。
でも、それを叩きわけても、その違いがまったくわからない人もいるのも事実で。

vrs:確かに。高校生の頃の自分にはさっぱりわからないと思います(笑)

渡辺:だね(笑)でも、それをわかるようになるためには、いろんな音楽を
聴かなければいけないと思うし。

vrs:そうですね。前にスティーブ・ジョーダンのDVDを見た時に
普通に8ビート叩いてるだけなのに、何かすごくニュアンスの違いが
はっきりしてるのにビックリして! 何なんですかね、あの存在感…。

渡辺:あそこまでいくと卑怯だよね(笑)
でも、それを黒人だからとかいっちゃうと日本人としては
悲しいじゃないですか。だから、何で違うのかっていう理由は
絶対あるので、それを血のせいにしないで(笑)
奏法として表現していきたいんだよね。

vrs:そうですね。それを方法として提示してもらえたら、とても
ありがたいですね。

渡辺:例えば、リンゴ・スターとか幸宏さんのようなドラムって、
1音1音がばっつり切れて聴こえるんだよ。
でも、スティーブ・ジョーダンのようなドラムは、1音が長い。
同じフレーズでも区切り方を変えると違って聴こえる。
それを叩く側が意図的に叩き分けることができると、伝わり方がぜんぜん
変わってくると思う。

vrs:そういえば、僕が一番始めに山背さんにモーラーレッスンを受けた時に、
スネアを叩く位置がバラバラで、それまで真ん中ら辺を狙うのがベストと
思っていた自分にはすごく衝撃だった覚えがあるんですが、
あれも音の長さに大きく関係してますよね?

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渡辺:昔からよく「スネアに5円玉置いて狙って叩きなさい」
とか言われてるけど、その練習方法を根本から覆してるよね(笑)
実際、ドラムの真ん中って音が詰まるんだよね。
特に均一にチューニングされていると余計に。

vrs:僕が思うに、真ん中を叩くと中低域が鳴って、アタック感が強く感じるんだと
思うんですよね。だから、真ん中を叩く方がいいと思うんじゃないかなと。

渡辺:なるほど。ただ、スネアを叩くとその音の波動がスネアサイドにぶつかって
まっすぐ打面に帰ってくるので、その跳ね返りを聴くことに
なるんだけど、ずっと同じところを叩いていると、結局そのスネアサイドからの跳ね返りと、
次に叩いた音がそれぞれ打ち消し合ってしまうので、あまり音量を感じられない
結果になってしまうんだよね。音が詰まって楽器本体が鳴らない感じっていうのかな。

vrs:なるほど。山背さんにせっかくスネアの打面もこんなに広くあるんだから、
どこ叩いてもいいですよって言われた時、少し安心した面もあり、不安もありで(笑)

渡辺:その叩き方を覚えて、音色を変えることができるようになると、ドラムセットを
どんどんシンプルにできるようになるよ。
極端な話、ドラムセットがなんでもよくなる(笑)
どんなドラムセットでもオレの音出すよってなれる。僕もそれが最近わかってきて。

vrs:すごいですね…。

渡辺:だから最近ドラムの機材を持ち歩かなくなってしまって(笑)
スタジオでのリハーサルの時とかスティックしか持っていかない。
ライブ前のリハでなければ、最近はスネアもペダルも持っていかないし。
音の出し方がわかってきたから、下手に機材がたくさんあると迷ってしまって。
でも、ここ数年になっての話だけどね。

vrs:なるほど…でも確かに、僕も昔スタジオで働いていた時に、
そのスネアでこんな音出るの!?とかっていう場面には何度も遭遇しました。
5インチでも6.5インチみたいな音を出すドラマーさんもいれば、ピッコロみたいな
音を出す方もいたり。叩き方次第なんだなと思って。

渡辺:でも、逆に機材に頼り過ぎてしまっている人もいるじゃないですか。
それってうまくなるペースが少し遅くなってしまうんじゃないかとも思って。
自分をあまり磨かなくてもある程度鳴ってしまったりするとね。

vrs:そうか、逆にそうなってしまうのか。

渡辺:そうそう。昔は自分もソナーのドラム欲しいな、とか思ってたけど、いま
そういうのぜんぜんないからね(笑)

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vrs:確かにうちのスタジオのこのセンシトーンとオールドのラディックのスネアじゃ、
音は違いますけど、それぞれおいしいポイントってありますからね。
それを使い分ければいいんじゃないかって思うところはありますよね。

渡辺:僕はもう普段のメンテナンス含めいろいろたいへんなので、
オールドのドラムに手を出したことはなくて。
僕が一番始めに買ったスネアはメイプルのピッコロスネアなんだよ。
理由は簡単、「軽い」から(笑)音色とかで選んでないっていう(笑)
でも、そのスネアのおかげでだいぶチューニングはうまくなったよ。

vrs:僕も一番始めに買ったスネア、YAHAMAのピッコロだったんですけど、
チューニングが難しかった印象が大きいです。
チューニングボルトが短いせいか叩いてるうちに外れてしまったりして。

渡辺:僕が買ったのはTAMA製で、ラグが通常10のところ、
そのスネアは11あったので、スイートスポットが点じゃなくて面になるっていう、
いまはもう売っていないタイプなんだけど、チューニングはしやすかったよ。
でも、ピッコロだからある程度は難しいんだけどね。

vrs:そうなんですね。

渡辺:でも、昔、先輩のドラマーがそのピッコロのスネアをレコーディングで
使いたいっていうから貸したことがあって。で、それを先輩の師匠のプロの
ブルースのドラマーの人が「このピッコロはよくチューニングできてる」って
褒めてくれたみたいで、すごくうれしかったんだよね。
っていうか、先輩、自分でチューニングしなかったのかよ!
っていうオチもあるんだけど(笑)

vrs:僕は中学の時、吹奏楽部でティンパニをやっていて、
いつも先生にチューニングを怒られてたクチで(苦笑)
そこで思ったのが、きっとドラムにもそういう風に決まった音程とかあるんだろうなって
こと。昔よくタムを回してこの曲になればいいとかありませんでした?

渡辺:あった!(笑)僕らの頃は競馬のファンファーレ。
「パパパ、パンパカパ、パンパカパ、パパパパー」ってヤツ。

vrs:そうそうそう。そんな通説を妄信的に信じてやってましたけど(笑)

渡辺:そういえば、DWのセットの内側にはキーが書いてあるんだよね。
そこに合わせると一番鳴るよっていう。ということはやっぱりそれぞれのドラムには
適切な音があるってことだよね。でも、いいと思うポイントは人それぞれだから
正解はないと思うけど。

vrs:へー、それは初めて聴きました!そうなんですね。

では、そろそろ時間なので、最後に悩めるドラマーにアドバイスをお願いします。

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渡辺:そうだな。悩んでる時は逆に何もしないっていうのもひとつの方法かも。
全く叩かない。音楽以外のことを夢中でやったりして。
そうするといずれ叩きたくなるんだよね。僕は結構そういうことが多くて。
例えば新しいフレーズとかにチャレンジしててうまくいかない時とか、
今日はこれ以上やっても無理だなと思ったら、何日間か寝かせてみて、
で、何日か後にふと思い立ってやってみると自然にできたりすることが割とあって。

vrs:へー、なるほど。ちなみに何日くらい?

渡辺:3~4日くらいかな。たぶん何も考えていないようで
どこかで意識してるんだろうね。
例えば、ドラムも一番最初はうまく叩けなかったじゃない?
でも、どこかとどこかの神経がうまくつながって叩けるようになるでしょ?
だからガムシャラに練習するのもひとつだけど、手を抜くというか、休み休みやることも
必要なのかなって思うんだよね。
あとは、表現みたいな段階で悩んでるとしたら、他の人のライブを観てみるのも
いいと思う。自分とぜんぜん違うタイプのドラマーが叩くのを観てみたりすると、
こういうアプローチもあるのかとかとか新な発見につながったりして。

vrs:確かに。

渡辺:あとは人の曲のコピーはたくさんやった方がいいと思う。
いきなり好き勝手叩いてもやっぱり引き出しが少ないと似たようなフレーズばかりに
なってしまうし。
しかも、ライブ盤とかと聴いた直後のテンションが高いうちに叩いてみたりすると、
それっぽく叩けたりするんだよね(笑)
だから、ある意味成り切るっていうことも試してみるといいかも。

vrs:メトロノームを使った練習とかってどうですか?

渡辺:うーん、ひとりでっていうより、さっき言ったバンドでクリックの裏を取るって
練習はアリだと思うんだけど、あれもある程度できるようになったら、
必要ないと思うし。逆にやりすぎて、クリックないと叩けなくなるのはよくないかな。
あっ、あとスタジオで練習する時に注意してほしいのが、最初にドラムのセッティング
をしてからそのセットに合わせて叩いてしまう人が割と多くて。
ドラムセットに自分が合わせに行くってことはよくなくて。
ドラムセットは自分を表現するためのひとつの道具で、道具は使って成り立つもの。
自分のドラミングに合わせたセッティングで叩くべき。
ある程度経験が必要かもしれないけど、その意識は持っててほしいかな。
それと、道具はたいせつに使いましょう!

vrs:それはスタジオ経営者として切にお願いしたいです!(笑)

—–

あとがき

以上をもちまして渡辺さんとの対談は終了です。
長い中断もありましたが、最後までお付き合いいただいた方々、
本当にありがとうございます。

対談を通じて、終始、渡辺さんがおっしゃっていたのは、ドラマーたちが
モーラー奏法についてできるだけ正しい情報を取捨選択できるように、
自分たちでも勉強してほしいということでした。
正しい知識でないことで、体に優しいと思って取り組んでいたことが
返って体を痛めることにつながってしまっては元も子もない。
時間も場所も限られてしまうが、それでもいまでは全国的にモーラーを
学べる機会が増えてきているので、ぜひ一度ちゃんとしたレッスンを
受けてみてほしい。自分もできるだけ多く人にマンツーマンで
指導してしていきたいということでした。

僕が以前に渡辺さんのレッスンを受けていた時に感じたのが、
ドラムというひとつの楽器に「奏法」という面から別の見方を教えて
もらったことで、より深く、より長くドラムとの付き合い方を教えて
もらえたなということ。対談の中にもありますが、
特に自分のドラムの音が優しくなったと感じました。
当初、ドラムのヘッドの音がほとんどだった体感音に、ドラムの胴鳴りが
加わるようになって、本当に叩いていて気持ちがいいです。
ドラムセットを中低音に囲まれて叩ける高揚感を
ぜひ他のドラマーの方にも味わっていただきたいなと思います。

今回のブログの内容について、もっと詳しく聞いてみたいと思った方は、
ぜひ一度渡辺さんのレッスンを受講してみてください!

最後になってしまいましたが、2時間近くも熱く語ってくださった渡辺晋さん、
スタジオを所狭しと駆け回って、素敵な写真にまとめてくれた
カメラマンの桧原勇太さん。本当にありがとうございました!
ドラム愛は永遠に不滅です(笑)

■velvet room studio drum lesson
渡辺さんによるドラムレッスン、生徒さんの人数も徐々に増え、好評開催中です!
随時生徒さんを募集しておりますので、まずは無料体験レッスンを受けて
ぜひご検討ください!
場所:velvet room studio 
http://www.velvetroomstudio.com/

内容:モーラー奏法をはじめ、生徒さんの要望にあわせたレッスンです。

料金:5,000円/1時間

時間:1~2時間/月1回

形態:個人レッスン

※11月のドラム無料体験レッスンですが、先月から事前にいただいていた
予約分で定員に達してしまいました。
改めて来月12月分を募集しておりますので、
お早めにスタジオまでご連絡ください。
【次回の無料体験レッスンの日程は未定です。
 決まり次第スタジオWEBサイトやtwitter、Facebookページにて
 発表致します。】

■Information
【イージーレコーディングサービス開始のお知らせ】

 2011年11月よりNorthernスタジオを、
ご予約いただいたお客さま(個人練習を除く)を対象に、
スタジオ料金のみで簡易のレコーディングを致します。
普段の練習時と同じセッティングで、各パートをそれぞれ録音し、
さらに簡易的にミックスも致します。ご予約時にお申し付けください。

※参考例:ドラム(最大マイク5本)、ベース(ライン)、
 ギターアンプ(マイク)、キーボード(ライン)、ボーカル(マイク)
※集音マイクの種類等、録音機器、録音方法、ミックスについては
 スタジオスタッフの判断で行われます。
※ご予約時間内に音源をお渡しするため、
 ラスト30分間は作業時間としていただいております。
 作業時間内の録音はできかねますので、ご了承ください。
※Mixerに立ち上げたマイクおよび楽器類については2chにまとめられるため、
 お客さまの楽器構成によっては、マルチトラックでの録音が
 できかねる場合もございます。ご予約時にご確認ください。
※お客さまに受け渡す録音音源はCDRのみと致します。
 1枚は無料サービス、2枚目以上は1枚100円でご用意致します。

2011年11月06日

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