「アーティストとスタジオ」の第二弾として、
現在velvet room studioにてドラムレッスンの講師を
務めていただいている渡辺晋さんにお話を伺いました。
渡辺さん、実は私の以前のドラムの先生でもあります。
ところが、事前にお聞きしたところ、
「僕、個人でスタジオで練習しないけど大丈夫?」
な、なんと…。
アーティストの方が普段どうやってスタジオを活用しているのか、
そういったお話を紹介していく趣旨で始めた連載でしたが、
ここに来て暗雲が…。
しかし、お話を聞くにつれ、ドラマーとして渡辺さんが普段何を感じて
どんなことを考え、実践しているのか、そんなことがだんだんわかり始め、
これは同じドラムの叩く人にぜひ聞いてもらいたい、そういった気持ちに
なりました。
僕も元々ドラムから音楽を始めた人間なので、改めて文章に起こしても
非常に興味深い内容になったと思います。
今回は「アーティストとスタジオ」番外編ということで、
お楽しみいただければと思います。
(撮影:桧原勇太)
■Profile
渡辺 晋
高校在学中にバンドを組み、ドラムを始める。
インディーズバンド時代は年間100本以上のライブを行なうが、
過酷な状況に腰を痛め、このままではドラムを続けていくこと自体が困難と判断。
色々と調べるうちに「モーラー奏法」の存在を知る。
都内でレッスンを行なっていた山背弘氏に師事し、モーラー奏法を学ぶ。
現在は山背氏が代表を勤める「山背弘ドラムメソッド」にて講師としても活動中。
また、ドラムペダル用アタッチメント「LOUDSTEP」の開発も行なう。
2010年には夏フェス「ASAHI SUPER DRY THE LIVE」にサポートドラマーとして参加
velvet room studio(以下、vrs):渡辺さんって、
普段どんな風に練習されてるんですか?
たぶん世のドラマーたちはプロの方が普段どうしてるんだろうというのは、
常に気になっていたりすると思うので、聞いちゃいますが(笑)
渡辺:イメトレかな。
vrs:えっ、どういうことですか?
渡辺:アタマの中で自分がドラム叩いていることを想像して
音を鳴らすんですよ。
vrs:ご自宅でってことですか?
渡辺:いや、家じゃなくても、道歩いてたりとかする時に流れてくる音楽に
合わせて自分のドラムを鳴らしてみるってこと。
まぁ、一種の病気に近いよね(苦笑)
この間もiPhoneでゲームをやっていて、気がつくと足で勝手に
リズム取っていて。
それを奥さんに言ったら一言「気持ち悪い」って言われました(笑)
vrs:その辺りのミュージシャンあるあるについて、
一般的な奥さんの理解はほぼ得られないですよね(苦笑)
渡辺:確かに(笑)
あと、歩く時のテンポとかも流れている音楽に合わせてたりとか、
ウラ拍を取っていたりとか(笑)
あと、踏切のカンカンのウラってよく取ってたりする。
vrs:よくあります(笑)
でも、それってドラマーだけの習性なのかと思っていたら、
昔「スウィングガールズ」って映画の中で女の子たちが町の中で
ウラ取ってるのを観て、音楽全般に言えることなんだと初めて知って。
渡辺さんもあの映画、ご覧になったことあります?
渡辺:ありますよ。信号に合わせてウラ取ってましたよね?
vrs:そうですそうです(笑)先生役の竹中直人さんが生徒たちに
音楽の楽しみ方を教えるすごく好きな場面なんですよ。
渡辺:リズムなんてどこでも取れるから。それこそドラムなんて
最も原始的な楽器だし。叩けば音が出るからね(笑)
そういう意味では垣根が低いからもっとたくさんの人に親しんでほしい
って思うんですよね。
vrs:確かに。
渡辺:ところで、vrsさんは以前僕に習っていた時、※モーラー奏法に
興味を持って来てもらっていたじゃないですか?
何かキッカケってあったんですか?
※モーラー奏法→いかにリラックスした状態で体に負担をかけずにドラムを叩くか
といった点に主観を置いたドラム奏法。
詳しくはこちらで:http://www.drumlesson.cc/
vrs:当時モーラー奏法って、キーワードだけが先に立って一人歩き
していたような感じを受けていて、単純に「モーラー奏法って何だ?」
っていう興味からというのがまず第一だったと思います。
それと当時、自分もバンドを辞めた直後だったので、自分のフォームとか
一度リセットして新しいものに取り組むにはいいタイミングじゃないかと
思ったんですよ。
渡辺:なるほど。でも、それに気付ける人ってすごく少ないと思うんですよ。
あまり適切な言葉ではないと思うんだけど、他に言いようがないので、
ここでは一般奏法と言いますが、一般奏法では腕がハンマーの動きを
するのが通常で、それが当たり前になっているので、
もっと楽な叩き方があるとか、そういったところに興味が行かないんですよ。
vrs:そうですよね。
僕も渡辺さんのレッスンを受けてから、和太鼓の演奏を改めて見た時に、
あの筋肉隆々の人たちでさえ、ハンマーのような直線的な動きだけじゃなく
らせんの動きのような振り子の原理を利用して演奏してることに
改めて気付いたりして、ただ叩いて音を鳴らすっていう行動にも、
いろいろ方法があるんだなって知るキッカケになりました。
渡辺:昔和太鼓をやっていた生徒さんがレッスンを受けに来た時に
動きが和太鼓を叩く時と似てるって言ってた。確かにあの大きなバチを
腕の力だけで振って音を出すって限界があるよね。
vrs:そうですよね。
渡辺:でも、世には常識として、スティックの持ち方ひとつ取っても
○○グリップとか結構無理な持ち方がまかり通ってしまっている気がして。
その持ち方だとツラくない?って単純に感じてしまうものを多くて。
vrs:確かに。ドラム叩くことってツラいもんなんですって常識を
植え付けられてしまっている部分はあるかもしれないですね(笑)
渡辺:日常生活を送る上で、人間って体に厳しい動きってしないじゃないですか。
でも、ドラムを叩くときはそういうものだって思い込んでいる人が
多い気がして。僕も学生の時とかはやっぱり思い込んで叩いてたけど(笑)
僕がモーラーを始めるキッカケは腰を壊してしまったところからなんだけど、
初心者の人ほど、モーラーを勧めたいんです。
vrs:確かに基礎が体に優しいものだったら、体を壊す確率も
ぐっと減りますもんね。
渡辺:せっかく始めるんだったら長くやってほしいし、
体を壊してドラムを辞めてしまう人もいるからね。
vrs:そうですよね。
ところで、僕がモーラーを始めた時に驚いたのが、その考え方が
スティックで叩くっていうのではなく落として音を鳴らすってことでした。
確かに言われてみると、スティックをスネアの上に落とすだけでも
結構な音が鳴るんだなって気付いて。
足も足で叩くというよりは、足をペダルに落として足の重みで鳴らすという。
でも、体の部位にも重みがあって、それを使ってドラムって叩けるんだって
いうことは、新しい発見でした。
渡辺:そうなんだよね。
スティックでドラムに叩き付けるということは、せっかくある体の重みは使われずに
筋肉を使って押さえつけるってことで。
それはやはり押さえつけて叩くよりも、単純に落として鳴らした方が
ドラム自体もよく鳴るし、体の負担も少ないし、こんな理にかなった奏法はないなと、
自分も初めて知った時は衝撃だったね。
—–
第一回はここまで。次回も、もう少しモーラー奏法の魅力についてと、
渡辺さんがどうやってモーラーを習得していったのかその経緯を語ってもらっています。
お楽しみに!
■Information
渡辺さんの行っているドラムレッスンですが、今週8月19日(金)に予定しています。
当日は無料体験レッスンも、14-15時の回と夜の回をご用意しております。
夜の回は18-19時もしくは20-21時で行う考えでおります。
それぞれ1名ずつの募集ですが、ご希望の方は、スタジオまでご連絡ください。
■velvet room studio drum lesson
場所:velvet romm studio
http://www.velvetroomstudio.com/
内容:モーラー奏法をはじめ、生徒さんの要望にあわせたレッスンです。
料金:5,000円/1時間
時間:1~2時間
形態:個人レッスン
2011年08月18日